邦画史上4位「幕末太陽傳」

 キネマ旬報が映画史上のベストテンを発表。日本映画の1位は「東京物語」,2位「七人の侍」,3位「浮雲」で,順当な選だと思ったが,4位に「幕末太陽傳」が入っていた。これって,本当に順当なのかなと思った。なぜなら,「幕末太陽傳」は,おじさんの好きな映画だから。おじさんの好きなものって,たいてい選外とか圏外,不評と決まっているのでね。

 幕末太陽傳は,川島雄三監督の作品である。主人公の佐平次がフランキー堺石原裕次郎は主役ではないが高杉晋作役で,裕次郎が出演ということでタイトルに「太陽」がついている。映画は,落語の「居残り佐平次」の佐平次が主人公,場所は落語の「品川心中」から品川の遊郭,時は幕末に据え高杉晋作など勤皇の志士が多数出場,それに落語の廓噺に出てくる人物が絡むというスラップスティックである。

 幕末太陽傳にフランキーの佐平次と裕次郎高杉晋作が廓の便所で出会うというシーンがある。川島映画には必ず便所が出てくる。それで,川島映画の解説や批評にもこの便所論が登場してくる。いろんな意見があるが,おじさんは,ものを考えるのが得意じゃないので,頭で理解できない分を体感しようと,とりあえず関わりのある所を歩いてみる癖ある。

 この作品が良いなと思ったときのおじさんは高校生で,川島監督すでに没していた。まずは墓参りからと,青森県,現在のむつ市田名部にある墓へ行く。
 川島雄三の生家も田名部にある。現在は大畑線が廃線になってしまったので行くには大変なところである。恐山へ行く最寄り駅だった。町の人口よりも墓石の方が多いような町で,町の規模にしては呑み屋が多すぎる感じのところ,生家は,町一番といわれた大きな商店だった。その裏通りに小さな呑み屋が軒を連ねている。その一角に小さな呑み屋が10軒は入れそうな公衆便所があったのである。公衆便所というより共同便所なのだろうと思う。この便所が川島映画の原点なのだと,おじさんは納得。
 あれから40年,何も考えてはいないのであるが,この公衆便所の中にフランキーと裕次郎が立小便している銅像ができたら,その横で小便をしたいなという夢があった。邦画史上4位「幕末太陽傳」ともなれば夢が近づいてきたなと思った。が,現在,民主党がやっている「仕分け」から考えると,銅像どころか便所も壊されてしまうかもと思うしだいである。