仲秋の名月 か 中秋の名月 か

花の便りがちらほらどきに、名月の話である。「仲秋の名月」は誤植ではないかとの話があって、ちと調べてみた。

仲秋とは、秋を初秋、仲秋、晩秋と分けたときの仲秋、すなわち陰暦の八月を指すことばである。
中秋とは、陰暦の七月一日から九月の末までの真ん中の日のことで、すなわち陰暦の八月十五日を指すことば。
ということで、「ちゅうしゅうのめいげつ」の「秋の名月」は誤植のようだ。「秋の名月」が正しいようだ。どっちでもよさそうだが、歳時記の例句に載るような句を作る俳人はさすがに使いわけている。といっても、「名月」を読んだ句に「中秋」ということばをわざわざ使わないものね。


○資料

俳句歳時記 第三版 角川書店

 仲秋 中秋 秋半ば 仲の秋
  三秋の中の月。陰暦では八月。今では秋の半ばを漠然とさす。

  仲秋の花園のものみな高し   山口青邨
  仲秋の太玉串を奉る      高野素十
  仲秋や座布団かさね一茶像   村越化石
  仲秋の月かたむけて丹波能   竹村竹聲


俳句歳時記 第四版 角川文庫

 仲秋 中秋 秋なかば
  三秋の中の月で、新暦の九月にあたる。虫の声が聞かれ、月も美しくなる。旧暦の八月十五日を指していう場合もある。 

  仲秋や母に明るき仏の灯    西島麦南
  仲秋や赤き衣の楽人等     高野素十
  仲秋や漁火は月より遠くして  山口誓子
  仲秋や畳にものの影のびて   片山由美子

  旧暦の八月十五日を指していう場合もある。 (仲秋の説明ではないようですネ)


基本季語五〇〇選(山本健吉)より

以下の季語は、初秋、仲秋、晩秋のどの時期に使ってもよい月。
月 上弦 下弦 げげん 弓張月 片割月 弦月 半月 月の弓 月の舟 上り月 下り月 望くだり 有明 有明月 朝月 朝月夜 昼の月 夕月 夕月夜 宵月 宵月夜 四日月 五日月 八日月 十日月 二十日月 月の出 月の入 入るさの月 月上る 月渡る 月傾く 月落つ 月更くる 遅月 月の秋 月夜 月よみ 月夜烏 月の輪 月の暈 幻月 月白 妲娥 嫦娥 玉兎 月の兎 月の蟾 月の鼠 月の桂 月の都 月宮殿 月の鏡 月の剣 月の氷


以下の季語は、陰暦の八月十五日しかつかえない月。
名月 十五夜 中秋節 芋名月 今日の月 月今宵 今宵の月 三五夜 三五の月 端正の月 名高き月 望月 望の夜 満月 明月