阿部完市さんのこと

 今日は,北千住の蕪蕉師匠宅で句会。随流さんが先週の朝日俳壇をコピーしてくる。阿部完市さんが亡くなられた記事である。


   鰯雲人を死なせてしまいけり  阿部完市


 何かでこの初期の句を読み,面白いなと思った。あるとき「にもつは絵馬」という句集を買って読んでみたら,これが俳句なのという感じで,作風がまったくかわっていて驚いた。阿部完市さんは精神医,たしかアンドレ・ブルトンも精神医だった。シュルレアリスムな句と思えばいいのだろうと読んでみた。


  栃木にいろいろ雨のたましいもいたり   句集・にもつは絵馬 昭和48年作

  少年来る無心に充分に刺すために     句集・絵本の空 昭和37年作


 阿部完市さんの句というと上の句を思い浮かべる人がいるだろう。


  瀬田唐橋いぢわる伯母にわたられ    句集・にもつは絵馬 昭和48年作

  妻ねむらせて部屋中に滝落としてみる  句集・絵本の空 昭和43年作


 小生は,上の句などが好き。瀬田唐橋などは,「猿蓑」などを踏まえているのでないかと思う。滝落としてみるは,何となくわかるかな。


 阿部完市(あべかんいち・俳人現代俳句協会前副会長,精神科医)が2月19日,心不全のため死去,81歳。著書に句集「無帽」,「にもつは絵馬」,「絵本の空」,評論集に「俳句幻形」などがある。