花の雲鐘は上野か浅草歟  芭蕉

今日は、花曇と云うよりも花冷えなり。

花の雲鐘は上野か浅草歟(か) 芭蕉

とても簡単そうな句ですよね。たけど、菅原道真漢詩「不出門」の「都府楼纔看瓦色、観音寺只聴鐘声」をよりどころにしていると云われちゃうと、ちと考えちゃうね。それから、花の雲は、花曇と云うよりも春霞と捉えたほうがよいでしょう。おじさんの句は、単なる遊びですね。
    
○ 不出門

一従謫落就柴荊
萬死兢々跼蹐情
都府楼纔看瓦色
観音寺只聴鐘声
中懐好逐孤雲去
外物相逢満月迎
此地雖身無検繋
何為寸歩出門行
       
ひとたび謫落(たくらく)せられて、柴荊(さいけい)に就きてより
萬死兢々(ばんしきょうきょう)たり 跼蹐(きょくせき)の情(こころ)
都府楼はわずかに瓦の色をみ
観音寺はただ鐘の声を聴く
中懐(ちゅうかい)は好く 孤雲をおいて去り
外物は満月に相ひ逢ふて迎ふ
此の地は、身に検繋(けんけい)無しといえども
何すれぞ寸歩も門を出でて行かん